お嬢様重奏曲!
「きゃっ」
 勢い余った薫は後ろへと倒れ込む。
 バシャーン!
 半ば控え目の水しぶきが上がり、薫の姿が消えた。
「ったく!」
 薫が倒れた頃には既に司は木陰から飛び出していた。
「ふぇ〜ん。びしょ濡れだよぉ」
 目立った怪我もなく、薫は全身ずぶ濡れで立ち上がる。
「ほらっ」
 優しく薫の頭にタオルをかける。
「あ、司さん。ありがとうございます」
「な〜んか嫌な予感はしたんだよ」
「すみません」
「いや。これは薫さんじゃなくて悪いのは美琴だから」
「なんでやねん!」
「あん? まさか今の自分を見ても、一切関係ないとか言わないよな?」
「うぐっ」
 美琴は膝まで水に入っているため、言い返す事が出来ずにいた。
「うぅ。服が濡れて気持ち悪いです」
「っ!」
 司は薫を見て顔を赤くして回れ右をする。
「? どうしたんですか? 司さん」
 司の行動を理解出来ず薫は首を傾げる。
「いや…その。薫さん、服」
「服? …………っ!」
 薫は自分の体を見下ろし、司の意図を察し両腕で体を隠ししゃがみこんだ。
 そう薫の服は全体的に白を基調した清楚感のある服装なのだが、それが今回あだとなった。
 全身水浸しのため服が下着まで透けてしまっていたのだ。
「じ、じゃあ俺先にコテージに戻って風呂の用意してくるな? 後、タオルの予備はあっちにあるから。そんじゃ」
 言いたい事だけ言うと司は、全速力でコテージへと向かって行った。
「やれやれ。とんだ災難やったな。いや薫にとってはある意味ラッキーだったと違うん? 司にアピール出来て」
「もう。そんな事無いよ。私恥ずかしくて死にそうだよ」
「ですが司様はどちらからタオルを持ってきてくださったのでしょうか?」
 司は一度も木陰から離れる事はなかった。
 それなのに木陰のところに薫だけではなく、美琴と先の分まで用意してあったのだ。
「なんか予測してたようやから、あらかじめ用意してたんと違う? それはそれでなんか悔しいけど」
「はっくちゅん!」
 薫の可愛いくしゃみで美琴と先は湖畔から出て、とりあえず薫の体や髪を拭く事にした。
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