お嬢様重奏曲!
 その後、ワインやウィスキーなどを五本ほど空け、三人は酔い潰れ眠ってしまった。
「やれやれ。んじゃ俺は後始末でもするとしますか」
 司は天井を見上げスッと一瞬にしてその場から消えた。
「何! やつの反応をロストしただと? くそっあいつはどこに」
 夜の暗闇に紛れ、夜空に一つ人影が浮いていた。
「のぞき見なんて趣味悪くないか?」
「っ!」
 いつの間にか現れた司に人影は動揺していた。
「ったくよ。小細工ばっかしやがって」
「いつから気付いていたんだ?」
「どっかのマヌケが気付いていないと、思ったその時からさ」
「………では最初から。さすがは御影の魔法使いだな。守護者と呼ばれるだけの事はあるわけか」
「アホか。お前程度に言われても嬉しくねえんだよ」
「くっ! いくら守護者と言えどまだガキ。俺が負けるわけがない!」
 敵の魔法使いが右手の指先から電撃を飛ばす。
「どこの誰に依頼されたか聞かせてもらうぞ」
 司はただ立っているだけだったが、手前で電撃が霧散した。
「御影家次期当主。御影司。これがお前を倒した男の名前だ」
「御影の次期当主! ではこいつが」
 相手は動こうとしていたが、すでに司は相手の動きを封じる魔法を使っていた。
「俺にケンカを売ったんだ。覚悟は出来てるよな、もちろん」
 司は最初の体勢から動いていない。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
 だが相手の体が無数に切り刻まれていく。
「次元の狭間に消え去れ!」
 司が叫ぶと、相手の頭上にマイクロブラックホールが発生していた。
「こんな馬鹿な! こんなガキがこれほどの」
 全てを言い切る前に相手の魔法使いは光さえ脱出出来ない穴へと、飲み込まれていったのだった。
「さてと。邪魔者は消え去ったし、戻るとしますか」
 物質を透過させ中へと入る。
 三人はまだぐっすりと気持ち良さそうに眠っていた。
 起こすのは忍びないが風邪をひかれるわけにはいかないため、ゆっくりと三人の側に降り立った。
「薫さん。起きて。風邪ひくよ」
 薫の体を揺する。
 三人ともすでにアルコールの分解が始まっているため、ひどい二日酔いにはならないだろう。
「………ん。あれ?司、さん?」
 薫はまぶたを擦りながら目を覚ました。
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