お嬢様重奏曲!
「俺は守護者だ。御影なんて関係ない」
「そんな子供じみた言い訳が通用すると、本気で思っているの? 御影家次期当主」
「だったらなおさらじゃないか。女の子一人も守れないで、何が御影だ。何が守護者だ」
「守る? 彼女を? 自分の意思でいなくなったかも知れないのに」
「だったら別れの一言もあるはずだ。それに」
「それに?」
「だったらなんで彼女を退学じゃなくて、休学扱いにしてるんだ?」
 司はにやりと木の葉に微笑む。
「……そう。そこまで」
 不意に木の葉は立ち上がり、指を鳴らす。すると次の瞬間、木の葉と司は遥か上空に移動していた。
「これはどういうつもりだい? 木の葉さん」
「こうなったら力ずくでもあんたを抑えるしかないでしょ」
 瞬時に二人の周囲に木の葉は結界を展開させる。
 それと同時に木の葉から殺気が放たれた。
「………それ、本気で言ってるのか?」
 司が口を開く。
 すると木の葉以上の魔力と殺気が司の体から溢れ出す。
「この程度の魔力と殺気で」
「くっ結界が持たない」
 展開させた結界にひびが入る。
「魔法とは魔力と知識、そして意思の力で強さが変わる」
 司から放たれた魔力と殺気が全て凝縮され、木の葉へと向けられる。
「木の葉さんだって分かってるだろ? 守護者は何かを護る時こそ力が発揮される事を」
 ましてや司は歴代最強とまで言われているのだ。
 今の木の葉は気を保つだけで精一杯だった。
 しかしこれでもまだ司は全力ではない。
「さあ、どうする?」
 司はただその場にいるだけなのに、木の葉は汗が止まらなかった。
 普段は叔母と甥の仲だからこそ、木の葉は上位に立てるが、実際は手も足も出ない。
「…………降参よ。私の負け」
 木の葉から殺気が消え指を鳴らすと、周囲は理事長室へと戻った。
「そっか。良かった。本気だったらどうしようかと思ったよ」
 司はホッと胸を撫で下ろす。
「あら? なんでそう言えるの?」
「俺と木の葉さん。一体どれくらいの仲だと思ってるんだよ。それに本気じゃないってすぐに分かったし」
「なるほどね。以外と当主に向いてるかもね? 司は」
 木の葉はどっと疲れが出たのか、ソファーに座り込んだ。
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