お嬢様重奏曲!
「まあそれはいいとして問題は今回で薫さんに俺が、魔法使いだって事がばれる事だよなぁ…」
 出来れば薫だけではなく、美琴や咲枝などにも知られたくなかった。
「しょうがないか。魔法無しで勝てる相手じゃねえしな」
 装備品の入ったケースを取り出し、フタを開ける。
「今回は魔法戦も考えられるから…っと」
 ケースからいつものダーツと綱糸、そして魔力を増幅させる宝石が付いたブレスレットとダガーを取り出した。
 装備品の具合を確かめると、司は明日に備え早めに眠りに就いた。
 咲枝と美琴が司に仕事の依頼をした次の日、薫は部屋の窓から外を眺めていた。
「………はぁ」
 深いため息を吐く。あと三日で許婚と正式に婚約する事になる。
 しかし神楽財閥の総裁である祖父に逆らう事は出来なかった。
「………司、さん」
 無意識に司の名前と涙が零れていた。
 慌てて涙を拭きベッドに倒れ込む。
 しばらくそのままでいると、何やら部屋の外が騒がしくなっていた。
 そしてドアがノックされる。
「どうぞ」
 薫がノックに応えるとドアが静かに開かれた。
「お嬢様。大旦那様がお呼びです。リビングまで起こしください」
「御祖父様が? 分かりました」
 薫はメイドを従え祖父の待つリビングへと向かった。
「………遅いなぁ」
 司は今神楽家の本邸つまり薫の実家の前にいた。
「やっぱコソッと行くべきだったかな?」
 玄関に備え付けられているカメラが全て司を捕らえている。
 神楽家の対応を待つ事五分。司はとうとう待ち切れず、玄関の門に両手を付く。
「ったく! 分かったよ! そっちがその気ならこっちも強引に行くぞ」
 両手に魔力を込め門を叩く。
 すると門は派手に吹っ飛び、土煙が舞い上がる。
「なるほど。最初っからそのつもりだったってわけだ」
 土煙が晴れるにつれ、目視でも人影が確認出来た。
 その数はざっと見積もっても軽く二、三十人はいるだろう。
「はっ! 上等じゃねえか! 受けてやるよ」
 司は肉食獣のような獰猛な笑みを浮かべる。
「守護者、御影司。推して参る!」
 魔力を全開にさせ地面を蹴り司は前へと飛び出して行った。
< 85 / 200 >

この作品をシェア

pagetop