お嬢様重奏曲!
「ちゃんとあるわよ。最上階に」
 その言葉に反応したのは美琴だった。
「しかし理事長。最上階て言うたら」
「最上階って空いてたっけ?」
「あのな? 寮の最上階言うたら」
 美琴が何やら薫に耳打ちする。すると薫の表情が変わった。
「理事長! それはいくらなんでも可哀相です」
 薫の様子から見てよっぽど酷い場所なのだろうと、容易に想像出来る。
「ん〜でも司の荷物はもう送ってあるし、もう届いていると思うけど」
 さすがは木の葉。口を挟まさせない見事な行動力である。
「ありがとう、神楽さん。まぁ住めば都って言うし、野宿よかマシだよ」
「……御影さんがそう言うんでしたら」
 司の言葉で薫も渋々諦めた。
「まぁウチのような可愛い女の子に囲まれて生活出来るんや。それだけでも幸せやろ?」
「…………んじゃ神楽さん。案内よろしく」
「え? あ、はい」
「って無視かい! なかなかやるやないの」
「ふふっ。それじゃ後はよろしくね」
 三人のやり取りを見て木の葉は優しく微笑み、三人の前から立ち去って行った。
 木の葉と別れた三人は寮へと向かった。
 セレスティア学園の寮は正三角形の形になっており、それぞれの角にそれぞれの学年の棟が配置されている。
 五階建てでそれぞれの階の中央は談話室になっている。
「んで? 最上階って言うのは五階って事か?」
「いんや。ウチらの言う最上階は六階の事や」
「六階? でも寮は五階建てだって」
「…一応は六階建てなんですけど。そこは昔から誰も使ってていないんです。だから…」
 薫はそこで口を閉ざすが何を言いたいかは分かる。
「そんなに心配しなくたって俺は平気だから」
「せやで? 司はこれでも一応男なんやから」
「一応ってなんだよ。一応って」
「んなもん言葉のあやに決まってるやんか」
「あ、あのケンカは駄目だよ。二人とも」
「あ〜薫。これ別にケンカとちゃうで」
「そうだよ。神楽さん。俺が桜塚とケンカするわけないだろ?」
「そうなんですか?」
「そうそう」
「せやせや」
 薫が首を傾げているが二人が笑顔で肯定しているため、それ以上は追求しなかった。
「おっと。ついたで? ここがこれからウチらが世話になる寮や」
 司の目の前にデカデカと存在感を感じさせる寮が建っていた。
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