お嬢様重奏曲!
「どうかしたんですか? 司さん」
「薫さん、悪い。校門の方で魔力の反応があったんだ。ちょっと行ってくる」
「あ! 待ってください! 私も行きます!」
 先行しもう姿が見えなくなりそうな司の背中を、薫は走って追いかけて行った。
「ふ〜ん。ここがあいつの通ってる学校か。全くおばさまもこんなところにしなくても」
 校門の前に踵まであるきれいな赤毛の女の子が、仁王立ちしていた。
「さっきあいつが展開させてる結界に触れたから、もうすぐ来ると思うけど」
 しばらくしてこちらに近付いてくる気配を感じ取った。
 その数は二つ。
「二つ? 一つはあいつだけどもう一つは誰だろう? おばさまの気配じゃないし」
 どうせもうすぐ分かる事なのだ。今の体勢を維持して待つ事にした。
「げっ! やっぱお前かよ。美凪」
 司は校門の前でなぜか仁王立ちしている女の子を見て、肩を落とす。
「やっと来たわね。こんなところで一体何してるのよ」
「何って学生だけど?」
「御影の正装して?」
「これは木の葉さんに頼まれて、学園祭の警備をしてるからだよ」
「ま、待ってください。司さん、歩くの早過ぎです」
 そこへようやく遅れて薫が司と合流する。
 そして顔を上げた薫と美凪の視線がぶつかる。
「ねえ司? この女は誰なの?」
「あの、司さん。この方は?」
 美凪と薫が同時に司に尋ねる。
「あのですね? こいつは御影美凪って言って、俺ん家の分家に当たる幼なじみなんだ。ちなみに一つ年下」
「司さんの幼なじみ、ですか」
「ちょっと! なんでそっちが先なのよ!」
「そんでな? 美凪。さっきから存外に扱ってるこの人は、かの神楽家の令嬢の神楽薫さんだ」
「か、神楽ってまさかあの神楽?」
 司が無言で頷く。
「アハハ。よ、よろしくね? 美凪ちゃん」
「こちらこそ、よろしくお願いします。神楽さん」
 この時、口調は優しかったが、やたら敵意剥き出しの美凪だった。
「神楽さん。一つ聞いていいですか?」
「な、何ですか?」
 最初の態度を目の当たりにしているため、少しだけ薫は怯えていた。
「どうして神楽の人間がメイド服を着ているんですか?」
「えっとそれは…」
 最初はもっとも当たり前な疑問に司と薫は苦笑したのだった。
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