お嬢様重奏曲!
「私のクラス、メイド喫茶をやってるの。だからこれは制服、みたいなものかな?」
「はぁ…。天下の神楽財閥がメイドだなんて…ってちょっと待って! クラスって事はもしかして他の生徒も?」
「美凪。それ正解」
 司は素直に頷く。
「俺も警備の仕事がなけりゃ危なかった」
「なんでよ? だって司は男でしょ?」
「それ言われると、俺ここにいられないんだけどな」
「まぁ。確かにそうだけど……。で、でも司は神楽財閥よりもある意味上位の御影家の宗家で、次期当主なのよ? そんなの許されるはずないじゃない」
「だと思うだろ? でもここじゃ関係ないんだ」
「ふ〜ん。でも司がメイド、ねえ」
 と美凪は思わず司のメイド姿を想像し、頬を赤くさせた。
「とにかく、美凪ちゃんも良かったら私たちのクラスに立ち寄っていってね? 御影家とか魔法使いとか関係なく」
 なるべく優しく微笑む事に努める薫だったが、美凪の表情が突然固くなった。
「ちょっと待って。神楽さんは私たちが魔法使いだと知っているの?」
「え? うん。つい最近ちょっとした事から知ったんだけど」
「ふ〜ん。そうなんだ」
 美凪がおもむろに右手を突き出す。
 その腕を司は掴み美凪を見る。
「美凪、お前今薫さんの記憶を弄ろうとしただろ? どういうつもりだ」
「どうもこうも。神楽さんに私たちが魔法使いだって事を、忘れてもらうだけだけど」
「んな必要ないだろ」
「何でよ? 後で色々と不都合でしょ。もしかしてまさか、この女に惚れちゃったとか?」
「……お前。誰に向かって言ってる?」
 司の冷たい声と同時に周りの音と言う音が、一切聞こえなくなった。
「お前程度が俺に命令しようってのか?」
 今まで聞いた事のない司の冷たい声と言葉に、薫は恐怖を覚えた。
「宗家とか分家とか俺はあんま気にしないけど、調子に乗りすぎなんだよお前」
 司は両手をポケットに入れ立っているだけなのだが、美凪の体が浮き上がり、その表情もどこか苦しげであった。
「ちっときつい罰を受けてもらおうか」
 美凪は涙を流しいやいやと顔を左右に振るが、司は全く気にする事なく右腕を振り上げた。
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