十二の暦の物語【短編集】
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「…葉月!」
『…へっ…うん?』
「線香花火やろーぜっ」
『…うん』

孝に差し出された線香花火の束から、1本を取り出して立ったまま見つめる
あたし、線香花火、嫌いだな
何か、線香花火って最後。ってカンジがする

『…ねぇ、孝』

しゃがんで静かに火を付ける

「んー?」
『明日…準決勝だよね?』
「おう」
『明日から…泊りがけなんだよね?』
「葉月だってそうだろ?」
『うん…そうなんだけどね…』

オレンジの小さな火花がどんどん増える

『あの…さ…ずっと言いたかったんだけどね…』

切なくなるな。線香花火
でも、この静かで切ない火花を見つめていると、普段言えない言葉が言えるような気がする

『あの…孝…甲子園、頑張って…』


「俺、打つよ?」


『え?』
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