十二の暦の物語【短編集】
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靴箱からスニーカーを出して履いた
今日は木曜日で部活が無いから、ちょっと早い帰りだった

『あー…にしても疲れた…』

かったるそうにバッグを肩にかけて歩いていると、後ろから一ノ宮の声がした

「っ――桜井さんっ」
『あ、一ノ宮』

一ノ宮が靴のかかとを踏みながら走ってきた
足が地面に接地するたびに、カポカポ音がした

立ち止まって、一ノ宮を待った

『一ノ宮。靴、ちゃんと履きなよ。靴壊しちゃダメだよ』

部活柄で、つい口に出してしまった

「あっ、す、すいませんっ」

慌ててしゃがんで靴のかかとを直した
履き終わると、立ち上がって

「一緒に、帰りませんか…?」

『はっ?』

え、マジで言ってんの?
あんまりいきなりだったから、結構大きい声が出た
一ノ宮の顔がどんどん控え目な自信無さそうな顔になった

「す、スイマセン…ダメですよね…」
『べ、別に大丈夫。行こうよ』
「あっ有り難うございます!!」

パッと顔が明るくなって、頭を下げてきた

『いや、頭下げることじゃないから』
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