十二の暦の物語【短編集】
真っ暗な夜空に、1つ、2つ
白い小さな光が、あちこちにチカチカ光り始めた

『…キレー…』

見つめているうちに、夜空に星が散らばり始めた
こんなに綺麗なんだなあ
しっかり夜空なんて見たこと無いから、ちょっと感動した

『…』

隣の一ノ宮を見ると、ずっと空を見上げたまま動かなかった
その真剣な目つき、何?
そんな表情、するんだ

ひゅっと、少しだけ寒い風が通り抜けた
スカートがちょっとだけめくれ上がった


『寒…』

「あっ」

一ノ宮が、ハッとした
いつもの焦ったような泣きそうな表情に戻った
あーあ。さっきの顔、ホントにカッコよかったのにな

「す、スイマセンっ。寒いですよねっ。桜井さんっ」
『え、ぁあ。別に大丈夫…』
「スイマセンっ。行きましょうっ」

あたしの先を走り出した焦った一ノ宮がコケた

『はは…大丈夫?』
「す、スイマセン…」

一ノ宮に駆け寄って、また空を見上げた
綺麗だ。やっぱり
ずっと見てたいな

『あのさ…』
「はいっ」
『ちょっと、公園とか行かない?』


一ノ宮の顔が、みるみる赤くなった
暗闇の中でも分かる
そんなに女子と接点無かったんだ…


「よ、寄りましょうっ」
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