十二の暦の物語【短編集】
公園のベンチに座って、バッグからMDプレーヤーを出した
電源を入れると、蛍光緑の光がパッとついた
再生ボタンを押して、イヤフォンを耳に当てた
4番を再生した

すぐに、あの大好きなメロディーが流れてきた
澄んだ歌声が響いてきて、上を見上げると気持ちよくなった

大好きな曲を聴いて
こんな綺麗な星空を見上げて
隣に、大好きな人が居る

一ノ宮が、あたしの顔を覗き込んだ

「何…聴いてるんですか?」
『ん?……ん』

片方を外して、一ノ宮に向けた
差し出した片方を受け取って、ゆっくりゆっくり耳に当てた
一ノ宮の表情が、パッと明るくなった

「これ…いいですよね」

多分、あたしと一ノ宮だけが使ってる着メロ
澄んだ歌声と深い歌詞

「ほ…星空に合います…」
『だよねえ……』

チラッと携帯を見た
もうすぐ帰らなきゃヤバいかな


「あ、あのっ」
『何?』
「アドレス…交換して下さいっ!!」

『……へ…』

向こうから、言ってくるとは思わなかった

『い、いいよ…?』
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