十二の暦の物語【短編集】
「弥生さぁー。ちょっとは手加減してよー。手首痛いっつの」

春香が面を外しなが口を尖らせる
あたしは顔を噴きながら苦笑いで答えた

『加減なんてしたら春香に1本取られちゃうもん』
「はっ」

大きく鼻で笑われた

「何言ってんの県3位が。弥生は加減してもウチぐらいには勝てるよ」
『駄目だよー。春香だって5位なんだから油断したらランクひっくり返されちゃう』
「ウチはいっつもひっくり返すつもりだから」

手ぬぐいを頭から外すと、髪の毛先が真冬なのに汗が噴出す首筋に張り付いた

自分で言うのもアレだけど、あたしは県3位
春香は5位
全学年共通の剣道トーナメントで2年生がそんな位置に居るのは凄い事だって言われた
団体も、3年生は女子が3人しか居なかったから春香と一緒に出た
剣道は、あたしの生きがいです

春香と話していると、1人、学ランを着た先輩が話しかけてきた

「弥生ちゃん、また上手くなったね~」
< 57 / 190 >

この作品をシェア

pagetop