十二の暦の物語【短編集】
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着替え終わって、木製の部室のドアをがらがらと引いた
部室を出る前に、ドアの直ぐ横にかけてある鏡を見る

かなりの癖毛で、ブローしかしてないから
汗をかいたら毛先がくるくるになってる

『…』

髪を撫でながら、先輩の言葉を思い出す

あたしの中で、どれだけ先輩の存在が大きいのか、知りません。よね


この髪だって
去年の春

入学したばかりのあたしが

《強制かけよっかなぁ…》

今と同じ様に部室の鏡を覗きながら、くるくる過ぎて嫌になる練習後の髪を撫でて呟くと
先輩が

《強制で無理矢理真っ直ぐにするよりも、今の自然なウェーブの方が似合いますよ》

そう言ってくれたから、あたしは
今まで1年間、その言葉だけで舞い上がってアイロンも、強制もかけなかった




あともう少し

あともう少しで、先輩と離れ離れになっちゃう
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