十二の暦の物語【短編集】
「じゃあ、1回、振ってみて」
『はい…面ッ!!』

照先輩に見られてて、カチカチになりそうだったけど、できるだけいつも通り、いつもの試合通りに竹刀を振り下ろした
照先輩はあたしの構え、動きをじっと見つめる

「んー…弥生ちゃんフォームも良くなったねぇ」
『有り難うございますっ!!』

面を外して勢いよく頭を下げる

「ただ――」

語尾を延ばしながらあたしの後ろに立つ

「こうした方が…」
『っ!!』

からんっ



「ぁっ…あの…」

ヤバい
つい…

竹刀を握るあたしの手に照先輩の手が重なって、ビックリして竹刀を落とした

『す…すいません…』
「いや、こちらこそ…」
『ぁ…もう、大丈夫なんで…っ』

竹刀を拾い上げて握る

「じゃあ…」

先輩はゆっくりあたしの手に自分の手を重ねて握る
また竹刀を落としそうになったけど、手に汗をいっぱいかいて我慢した

あたしの手を握りながら、竹刀をゆっくりと上に持ち上げる

「弥生ちゃんは振り下ろしてからの動きに少し隙が出来るから、もう少し…」

先輩の最後の指導

でも、それはあたしの耳には届かなくて

明るい日差しが差し込む体育館の中央で、真っ赤になっていた
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