哀しみの音色
10章 心の解放
「落ち着いたみたい」
「そうですか……」
莉桜の家。
浩介さんが車で送ってくれて、莉桜はその間に気を失うように眠ってしまった。
最初はそれこそ、うなされていたが、ようやくそれもなくなり、規則正しい寝息が聞こえてきた。
俺と浩介さんは、ベッドから少し離れると、テーブルを囲って座った。
「また、心配させるようなとこ、見せちゃったね」
「……いえ…」
心配というよりは、悔しかった。
ようやく、莉桜は俺を見てくれたかと思ったら、まだ莉桜の中に蓮さんの存在は大きく残っていて……。
(れんっ……蓮っ!!)
泣き叫ぶ莉桜の声が、頭から離れない。