哀しみの音色
季節は夏を通り過ぎて秋になっていた。
海水浴はできないけど……
「こういうのも、いいよな……」
「……うん」
浜辺に座って海を眺める俺たち。
そんな時間も悪くない。
会話もなくて
波の音だけが聞こえる。
そしてふと、莉桜が口ずさんだ。
「時間をとめてた
心を捧げてた
もういない あの人のために―――」
聞こえてくるのは、あの時の歌。
夢の中で聞いて以来、ちゃんと聞くのは初めてだった。