哀しみの音色
俺は莉桜の歌声に耳を傾け、黙ったまま海を眺めていた。
やがて歌が止まる。
それと同時に、莉桜の肩を抱き寄せた。
「……いい歌だな……」
「……ん」
「俺を想って作ってくれた歌?」
「……知らない」
照れ隠しなのか、莉桜は正直に答えてくれない。
だけどちらりと覗き込んだ莉桜の横顔は、少しだけ照れた表情で海を見つめていて、俺はそれだけで充分だった。
「莉桜」
名前を呼び、振り向く莉桜。
その唇に、そっとキスを落とした。
「……ありがとな」
唇を離して、至近距離のまま莉桜を見つめる。
莉桜は黙ったまま、俺を見つめ返していた。