哀しみの音色
 
「好きな食べ物は、ラーメン。
 好きな色……黒かな。
 好きな動物……うーん……犬?」

「うん」

「コーヒーが好きで、カフェのバイトやってて……。
 あ、そういえば言うの忘れてたけど、莉桜と同じ大学2年。19歳」

「そう」


自己紹介なんて、入学当初以来だ。
正直、たった一人のためにするのは、ひどくこっぱずかしい。


「……高いとこ…平気なんだよね」
「え?あ、うん」


次の言葉に詰まっていると、莉桜から質問を投げてくる。
俺はそれにこたえていった。


「じゃあ、絶叫系は?」
「意外と平気。というか、好きなほう」
「そっか……。
 泳げる?」
「もちろん」
「海は好き?」
「好きかな」


そんなありきたりな質問を、いくつもいくつもした。

時々、莉桜にも振ったりして、まるでお見合いをしているかのように質問をしあった。


思えば、こんなに何も知らなかったのに、俺は莉桜のことを好きになったんだな……。


そう思うと、自分に苦笑した。
 
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