哀しみの音色
6章 揺らぐ瞳
「樹」
大学の昼休み中、雄太と一緒に食堂で昼飯を食べていると、突然莉桜に声をかけられた。
「今日、3限まででしょ?あたしもだから、一緒かえろ」
「あ、おう」
「それじゃ、終わったら校門で」
莉桜は俺の返事を聞くと、スタスタと去っていく。
まさか、大学内で声をかけられるとは思ってもいなかったから、それ以外何も声をかけられなかった。
「ちょちょ!おまっ、どういうこと!?」
俺よりもテンパっているやつが約一名。
目の前の雄太は、目を丸くさせ驚いていた。
そりゃそうだ。
大学一美人と言われているあの水島莉桜と、放課後の約束をしているなんて信じられないだろう。
しかも性格は、超毒舌を吐く、冷たい女となっている。
俺はなるべく平静をたもって……
「ああ、付き合ってるから」
たった一言、そう返した。