何度でもまたあなたに恋をする
そんな私に突きつけられた難題。
それは結婚だった。

「あのな、そのここを買い取りたいと言ってる人がいてな。地主さんに立ち退きを命じられたんだ」

「立ち退き?!どうして?この店流行ってるのに」

「ああ、おかげさまで繁盛はしている。ただ、先方さんが提示してきた金額は出せない。正直ここの場所は気に入っていたから惜しいとは思ってる。でなんとか頼み込んだら先方さんもある条件を飲んでくれたら土地をこのまま借地の状態で貸してくれると言ってくれてるんだ」

「ある条件?」

「その・・・あのな、その・・・」

お父さんが言いにくそうに口ごもる。なんだろう。そんなに言いにくいことなの?条件って。

「その、この土地を貸す代わりにお前をな、その嫁に欲しいと言ってるんだ」

「よ、嫁?!」

お父さんはそのあと言いにくそうに口ごもりながらもゆっくりとその条件について話してくれた。要約するとこういうことらしい。先方さんはなんらかの形であたしのことを知っていて気に入ってるらしい。そこでこの土地を貸す代わりにあたしを嫁に欲しいのだとか。いきなり嫁と言われても全然ピンと来ない。

「莉央、私はねこんな条件飲む必要ないと思ってる。お父さんはお店に拘りがあるかもしれないけれど娘と交換になんて言ってくる人があなたを幸せにしてくれるなんて思えないもの」

お父さんがお店の仕込みに行った後、二人っきりになったお母さんがそう言ってくれた。確かにお店と交換になんて今時、何を言ってるんだと思う。
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