何度でもまたあなたに恋をする
そんなことを思い出しながらなんとか終えた初仕事。本当にここの人たちは優しい。女友達とランチ。なんて憧れていたOLとは違うけれどまだ初日のあたしに「おつかれさん」と全員が声をかけてくれる。

「悪い。長引きそうだからリリアンで待っててくれないか?」

現場職の人たちが帰った後、あたしと清水さんだけになって今日は話したいことがあるからと付き合えと言われて待っていたけれどそう言われたので先にリリアンに向かうことにした。

リリアンに行くのも久しぶり。大好きなクリームワッフルを久しぶりに食べようかな。そんなことを考えながらリリアンに向かう途中、あたしはまだ気がついていなかった。あたしの背後からただ、ただ様子を伺う一人の姿に。

「あれ?久しぶりだな。もう来てくれないかと思って寂しかったんだぞ」

純喫茶でもあるリリアンの扉を開けると髭を生やしたマスターがあたしの顔を見て嬉しそうに微笑みながらそう声を掛けてくれた。夏から本格的に始めた卒論も年末までに終わらせたし、就活もしなくていいと先方に言われたので大学に来ることもほとんどなかった。だから本当にリリアンに来るのは久しぶり。

「マスター。ご無沙汰してます」

「どうする?今日は久しぶりに食べるかい?あれ」

「喉から手が出るくらい食べたいんですけどとりあえず今は待ち合わせなんでそれからにしますね」

あたしの指定席が空いていた。久しぶりにそこに座ると卒論を頑張りつつ、時々見かける清水さんに目を奪われてたことを思い出す。
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