何度でもまたあなたに恋をする
家に帰るのを見届けた清水さんの車が走り出す音を聞いてすぐにお姉ちゃんに電話を掛けたけれど話し中。仕方なく、先にお風呂に入って改めて掛け直すと今度は繋がったのですぐさま清水さんのことを尋ねた。

お姉ちゃんは丁寧に教えてくれた。清水さんとお姉ちゃんは昔からの知り合いであたしもよく顔を合わせてた。でも、あたしがどうしても清水さんを思い出せないことを伝えると少しだけ沈黙の後、電話越しにお姉ちゃんはこう言った。

「それはね、莉央が彼のことを好きで告白したんだけど、振られたから。それがすごく莉央にとっては辛すぎることで記憶の中から無理矢理消そうとしてたからなのよ。フラッシュバックってあるでしょ?それとは逆に記憶をなかったもののようにしてしまうこともあるみたい。PTSDっていうのは」

失恋でPTSDになるくらい辛い思いをしたのか。全く心当たりがない。でも、もしそうだとしたらあたしはまた同じ人を好きになってまた心を封じ込めるようなことになるかもしれなかったのか。

「でも、良かった。あの時はまだ幼かったけれどきっと今ならあなたの一番側で守ってくれると思う。彼ならあなたの結婚だって」

「何、言ってるの?お姉ちゃん。結婚はもう決まったこと。あたしは受け入れてるよ」

「嘘つき。お母さんとお父さんのお店を守りたいからそんなこと言ってるだけでしょ。彼を信用して。そして頼りにしてほしい。莉央を救えるのは彼だけに決まってるから」
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