何度でもまたあなたに恋をする
「とりあえずここにいる間、俺と付き合えよ」

「は、はあ?」

「あんたみたいに見るからに男慣れしてないやつ嫌いじゃねえし、勝手に失望されてもなんだかムカつくしな。だったら今度は俺と付き合ってちゃんと見極めてもらおうかと思ってさ」

「だ、誰もあなただなんて」

「だって俺以外のここの人間、みんなオッサンばっかだぜ」

パッと腕を離し、あたしの隣に立つ彼。どうする?とあたしに問いかけてくる。どうするも何も断れば確実にこの人はバラすに違いない。

「あんたさ、俺のこと知りもしないでよくここに乗り込んできたよな。本当、一目惚れってやつかなんだか知らねえけど少しは俺のこと知ってるのかとも思ったのにさ」

言い返す言葉がなかった。恋がしたいからかっこいいと思ったから。それだけで強行突破した。あたしには時間がない。中学も高校も大学も好きな人がいなかった。周りはみんな恋をしていて幸せそうだったのにその感覚が分からなかった。

『かっこいい』その感情が芽生えただけであたしには大進歩だと思った。だから迷わずに突き進めた。かっこいいと思えたのならきっと好きにだってなるって。好きになりたい。好きな人が欲しい。恋がしたい。

結婚するまでに。
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