何度でもまたあなたに恋をする
「ここまで乗り込んできたんだろ?簡単に俺を諦めるなよ。失望したんならもう一度好きになってみろよ。俺も包み隠さず素の自分をお前に見せるからさ」

口調は荒っぽいままだけれど言葉と声にさっきにはなかった優しさが感じられて俯いていた顔を上げた。ふと重なった視線。今まであたしが見たことのなかった目を細めた笑顔。

ドキンと心臓が音を立てた。

「でもさ、それだけじゃなんか割に合わねえよな。なんかペナルティをつけないと。そうだな、よしじゃあ一日一回俺にキスするってのはどうだ?」

「はい?キ、キス??」

「決めた。今日から毎日お前から俺にキスしろよ」

とりあえずここじゃと腕を引かれ彼が引き戸を開けると中に入れられる。そのまま壁際に体を押し付けられて今度は正真正銘の壁ドン状態。さっきは少し見直したのに。いきなり何を言い出すかと思えばキス??

「ほら、ペナルティなんだから逆らえないぞ。しなきゃバラす」

「む、む、無理です!いきなりキスなんて。絶対に出来ません!!」

「そっ。ならバラすか」

「契約が違います。付き合うって言ってたじゃないですか」

「だからそれは契約。キスはペナルティだろ。俺に勝手に失望した罰。ほらかかんでやるから。10数えるまでにやらねえとバラす」

そう言って目を瞑りいきなりカウントダウンを始める。なんなのこの人。本当に無理。
< 8 / 37 >

この作品をシェア

pagetop