不良系幼なじみとの甘い恋愛事情
そして唇に微かな温もりが落とされる。
それはあまりにも一瞬すぎて、経験がなさすぎるあたしにはすぐに理解出来なかった。
その温もりが唇であるということ
キスされたんだということを。
目を見開いたまま固まる。
その一瞬がひどく長いことのように思えた。
「やべ、手ぇ出さねぇって言ったのに。つい」
悪びれもなくそう言って、愛翔はあたしの上から退いた。
頭をボリボリ掻いて、呑気にアクビまでしている。
待って……
今、愛翔とキスした⁉
一瞬だけだったけど、唇になにかが触れた感触は残ってる。
頭が真っ白になって、うまく回らない。
確かに
キス、された。
「あ、ありえない……」
顔がカーッと熱くなって、一気に全身が火照った。
気付くとあたしは部屋を飛び出して、無我夢中で階段を駆け下りていた。
そして、玄関を出て当てもなく走った。