不良系幼なじみとの甘い恋愛事情


「マジだけど、なんで?」



ポカンとするあたしに、愛翔がフッと笑ってみせた。



「ありえねぇ」



わけのわからない言葉に、ますます頭を悩ませる。



なんだって言うの?



「な、なによ?」


なんでそこで笑うわけ?


なんか変なこと言った?



腕を掴んだまま、愛翔は繁華街の中を突き進む。



あたしはそんな愛翔の横顔を見つめながら、笑われたことに唇を尖らせた。



「好きな人がいるなら、あたしと付き合ってる場合じゃないじゃん。頑張ってそのコに告白してみれば?うまくいくよう、協力してあげてもいいよ」



なんでこんなこと言ってんだろ。


余計なお節介だって言われるかもしれないのに。



だけど



好きな人がいるかもしれないとわかって、胸を痛めている自分もいた。



「自分がなに言ってるかわかってんの?」



単なる暇つぶしの相手に言われて気を悪くしたのか、愛翔が突然低く冷たい声を放った。


愛翔の行動をとやかく言う資格なんてあたしにはない。



「わかってるよ」



「わかってねぇよ」



「ちょっ」



腕を握る力が強まったと思うと、狭い路地裏へ向かって愛翔は歩き出した。


< 88 / 266 >

この作品をシェア

pagetop