ずっと、ずっと。
2. side K.
***
……涙が出そうだった。
『幸せ』
『あなたと一緒になって良かった』
友美の口からその言葉が聞ける日が来るなんて、思っていなかったから。
30年間もの年月を共にしてくれているだけで、俺は十分だった。
ただ隣に友美がいるだけで、その上子どもまで授かって、俺は世界一幸せな男だと思っていたから――。
*
「――友美にプロポーズした」
俺が隼人にそう打ち明けたのは、友美にプロポーズしてからもうすぐ1ヶ月経つ、という時だった。
まだ、友美からの返事はないけど、返事を焦らせるようなことはしなかった。
むしろ仕事の忙しさに身を任せ、あまり考えないようにしていた。
……プロポーズは断られるだろうと、確信していたから。
でも、隼人にプロポーズしたことを伝えてしまったのは、俺の黒い心からだった。
「――……そうか。プロポーズ、か」
「あぁ」
目線を下げる隼人をじっと見る。
……隼人、何を考えてる?
俺のことをズルいと思ってる?
そうだよな。
おまえには一生することができないことを、俺はいとも簡単にしたのだから。