ずっと、ずっと。
 




「ただいま……」

「おかえり……――って、あれ?友美?早かったな」

「っ!」


居間に入った瞬間、目に入ってきたのは兄の姿。

いると思わなかったその人物に、私の胸がドキンと鳴った。

誤魔化すように、そこにいるはずの人物の名前を出す。


「……お母さんは?」

「ん?あぁ、何か近所の会合だって」

「……そう」

「あ、今日、圭斗と会ってたんだろ?」

「え、うん。そうだけど」

「やっぱりな。オレ、フラれたし」

「え?」

「あいつ、いつでも友美優先だからな。オレのことなんかどうでもいいんだと」

「……そう、なの」

「なのに、こんなに早く帰ってくるとか……あ、わかった。ケンカでもしたんだろ。さっさと仲直りしろよ?」


ニヤ、と笑う兄の表情に、私の心臓はただただ鼓動が速くなるばかりだ。

普通の会話なのに……

私の彼氏の話をしているのに……

なんで、私は兄に対してドキドキしてるんだろう?

 
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