ずっと、ずっと。
*
「ただいま……」
「おかえり……――って、あれ?友美?早かったな」
「っ!」
居間に入った瞬間、目に入ってきたのは兄の姿。
いると思わなかったその人物に、私の胸がドキンと鳴った。
誤魔化すように、そこにいるはずの人物の名前を出す。
「……お母さんは?」
「ん?あぁ、何か近所の会合だって」
「……そう」
「あ、今日、圭斗と会ってたんだろ?」
「え、うん。そうだけど」
「やっぱりな。オレ、フラれたし」
「え?」
「あいつ、いつでも友美優先だからな。オレのことなんかどうでもいいんだと」
「……そう、なの」
「なのに、こんなに早く帰ってくるとか……あ、わかった。ケンカでもしたんだろ。さっさと仲直りしろよ?」
ニヤ、と笑う兄の表情に、私の心臓はただただ鼓動が速くなるばかりだ。
普通の会話なのに……
私の彼氏の話をしているのに……
なんで、私は兄に対してドキドキしてるんだろう?