Kitty love
「あ、」

「あ!」



ちょうど俺が生徒玄関を出たところで目が合ったそいつは、まさに帰宅する状態でいる俺を見て声を上げると、うれしそうにパタパタと近寄ってきた。



「初めてですねー、帰りに会うの!」

「……ソーデスネ」

「へへー、途中まで一緒に帰りましょ~」

「……ハイハイ」



ため息まじりにそう言って歩き出した俺の後を、今日も今日とて昼休みに俺のクラスへ姿を現した天然女がついてくる。

一緒に歩きながらも相づちばかり打っている俺とは正反対に、さまざまな話題で口を動かしっぱなしの彼女。

いつ見ても楽しげな笑みを浮かべているその顔を横目でちらりと見て、俺はようやく、自分から口を開いた。



「……つーかさ、おまえは毎日飽きないわけ? 俺自分でも思うくらい、おまえにはキツいことしか言ってない気がするんだけど」

「えっ?」

「いい加減、嫌になったりしねぇのかよ?」



その問いにとなりを歩く彼女が、驚いたように目をまるくしながらこちらを見上げてくる。


……何訊いてんだ、俺。

もしこれで「ほんとはもう関わりたくない」とか言われたら、どーすんだよ。


頭の隅でそう思い直し、「やっぱなんでもない」と言おうとしたところで──ふ、と彼女は笑った。



「やだなーせんぱいっ、そんなことせんぱい大好きっ子のあたしが思うわけないじゃないですか~!」

「………」

「だってせんぱい女のあたしから見てもかわいいし、ていうかかわいいし、怒ってる顔もやっぱりかわいいし」

「………」

「ひゃ~いひゃいれすいひゃいれす! はにゃひてくらひゃい~!」



俺が無言で両頬を引っぱるとじたばたしながら必死に懇願してきたので、とりあえずはパッと両手を放してやる。
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