Kitty love
―――――――
――――


「わ!」

「うお、」



初めてお互いを認識して言葉を交わしたのは、1ヵ月ほど前のこと。

横山を始めとする同じクラスの奴らと話をしながら廊下を歩いていると、突然胸のあたりに衝撃を感じたのだ。

声と痛みにつられて視線を下げると、そこにはそんなに身長の高くない俺でも難なく見えた、綺麗なつむじ。

思わず立ち止まっていた俺を意識しているのかいないのか、目の前のそいつは「いたた、」と小さく呟いてからパッと顔を上げた。



「……っ」



ドキ、と自然に心臓がはねる。

だって自分より低い位置にある頭を上向かせたその女は、10人中10人がそう評価すると思われるほどに、かわいい部類の顔をしていたから。


そいつは俺の顔を見た瞬間なぜか一瞬だけ目をまるくし、それからすぐハッとしたように口を開いた。



「ごめんなさい! ちゃんと前見て歩いてませんでした!」

「(自己申告……?) や、別にいいけど」



……変な女。つーか何この距離、近くねーか?

言葉を返しつつ、頭の中ではそんなことを考えていると。

未だ俺のすぐ眼下にいる女に穴があきそうなほどじ、と見つめられているのに気づき、思わずたじろぐ。
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