Kitty love
「うぜーぞ横山、んなことおまえが気にする必要なし。つーか、俺らは前から知り合いなんだし別に不思議じゃねーだろ」

「ひど! えーじゃあ真白ちゃん、これからは俺のことも名前で呼んで……」

「え、」

「真白、ちょっと来い」



横山と真白が何か言うより先に、真白の手首を掴んでずんずん歩き出す。

同じ室内にいた奴らの視線を背中に感じたけど、構うことなく教室を出てそのまま階段の方へと向かった。



「……せんぱい、なんかすごい見られてましたよ」

「別に、それで他の奴らにおまえが俺のだってわかれば、それでもいーし」

「せんぱい、キャラ違いますよ……」



階段近くの、廊下からは見えない位置に立ちながら、頬を赤く染めて恥ずかしそうにうつむく真白を見下ろす。

クラスメイトたちの前では手首を掴んでいただけの手は、今はしっかりと絡まっていた。



「言っとくけど、俺はツンデレとかじゃないからな。……けど俺、自分のすきなヤツが他の男にかわいいって言われてるのとか、ましてや名前呼びするのを黙って見ていられるほど、我慢強くないから」



言ってからぎゅ、と正面から両手を握って、自分の額を真白の額に軽くあてる。

近すぎる距離に視線を泳がせる真白を、まっすぐに見つめた。



「……だから他の奴らには見えないところで、思いきり甘やかす」

「せ、せんぱ」

「そんなわけだからおまえも、俺以外の男を名前呼びしたりなんかすんなよ」

「わっ、」



無防備な額にデコピンをかますと、突然の攻撃に驚いた真白はとっさに目を瞑る。

そろそろと目を開けた彼女の目の前にいるのは、照れ隠しに不機嫌な顔をしている俺。

真白はそんな俺を見上げ、うれしそうに笑って大きく頷くと、俺の腰にぎゅうっと思いきり抱きついた。




「せんぱい、だいすき!」

「……知ってる」










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