雨情物語③<花の色は>
高校からの帰り道、スクランブル交差点を東に渡ると、県民自然の森公園のツツジの植え込みに色がついていることに気がついた。
僕はどこにでもいる高校生であるから、ふだん花を愛でたりする趣味はない。
ただ、その日だけは、なぜだか花が目についた。
――― いつも、ここでお待ちしております。
下校時刻にはほとんどの生徒がこのスクランブル交差点を渡って駅に向かうから、学校指定の黒い傘が土石流のように溢れかえっていた。
そのなかに、鮮やかな濃紅色のツツジの花。
僕は、花に手を伸ばした。
雨で洗われたその花は、しっとりと吸い付くような感触だった。
「次の電車に乗らないと、塾に遅れるぞ」
「ああ、急ぐか」
僕は同じ塾に通う友人と傘を並べて歩き出した。
僕はどこにでもいる高校生であるから、ふだん花を愛でたりする趣味はない。
ただ、その日だけは、なぜだか花が目についた。
――― いつも、ここでお待ちしております。
下校時刻にはほとんどの生徒がこのスクランブル交差点を渡って駅に向かうから、学校指定の黒い傘が土石流のように溢れかえっていた。
そのなかに、鮮やかな濃紅色のツツジの花。
僕は、花に手を伸ばした。
雨で洗われたその花は、しっとりと吸い付くような感触だった。
「次の電車に乗らないと、塾に遅れるぞ」
「ああ、急ぐか」
僕は同じ塾に通う友人と傘を並べて歩き出した。