大人の純愛宣言

5昔の約束

~6年前の約束~

「リナちゃんさー、どんな男がタイプなの?」
明朝、退院する悠君が消灯前のナースステーションに遊びに来ていた。

突然の質問。

リハビリをサボる悠君を何度叱ったことか…
出来の悪い子ほど、可愛いと言うのは本当のことで、実は退院してしまうのが寂しかった。でも本来は快復をサポートしていくのが私の仕事なのだから、元気に送り出さなければと強く思っていた。

「タイプの男?そうだねぇ~大人の男かな、それから、私のことを泣かさない人!」そう言って笑うと、少し複雑そうな顔をしていた。
悠君はナースの間でも人気がある可愛らしいというか、キレイな顔をしていて…彼女らしいお見舞いの子も何人も見かけた。どれが彼女か分からなかったけれど、まわりの女の子がほっとかないってのはよく分かる。

「俺、大人になって稼げるようになったら、リナちゃんと結婚したいっす!」

「えーマジか。ソレ、ホント?ちゃんと私がオバサンになっても責任取ってよ!」

そう言って冗談で返したが、彼の真意はなんだったのだろう…若い子のノリの良い発言だろう。

そして約束の指きりをして、消灯の時間だからとベッドに戻ってもらったのだった。
翌朝、悠君はお父さんとお母さんと共に自宅に帰っていった。エレベーターの前で「元気で頑張ってね!外来に来たら、遊びに来てよ~」と言って、手を振って別れた。それから一度だって、悠君のこと忘れたことはなかったのだけれど、悠君は遊びに来たことはなくて…6年の月日が経った。


そして彼は、大人になって私との約束を果たすため…私の目の前に現れたのだ。





これが、私と彼の恋の始まりだったのかもしれない。




☆リナと悠介の場合・完☆




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