大人の純愛宣言
私の母は、高校生のときに他界した。長い闘病生活だった。母子家庭だった、我が家だったが母が他界した後は父に面倒を見てもらった。とは言っても父も再婚していたので、私は高校生のときから一人暮らしをしていて、生活費などを父が工面してくれた。そういう生活をしていたからなのか、私は人一倍独立心が強かった。誰の世話にもなりたくないと思っていたし、人に甘えるのも下手だったし。

そういうわけで、ここの病棟では私はお局的な存在かもしれない。それでもかまわないのだ。

私は澤井リナなのだから、こういう人間でぜんっぜんかまわないのだ。




日勤が終わり、更衣室で着替えていると…藤井先輩に遭遇した。
先輩は今では主任という役割で、上司なのだが…
先輩は入職時私のプリセプター(教育係)であり、私は出来の悪いプリセプティで…藤井先輩は、私のことを公私ともに面倒を見てくれた。

談笑しながら、あっと思い出したように藤井先輩は、話し始めた。

「そういや、あんた30歳になったでしょ!あーぁ、もう2年もの間、失恋の痛手から抜け出せないで!だいたいねぇ、あんな男早く忘れて…次の!」

そうマシンガンのように話し始めた先輩を阻止し、

「良いんです、私はこのまま男断です。一生一人で生きていく覚悟はありますぅ!っていうか、一生藤井先輩についていきますってば!」

と笑うと、先輩は 絶対にいやよ、あんたの世話なんかしないからねと肩をバシバシと叩きながら豪快に笑った。

先輩は優しい。

2年もの間、私は失恋の傷から癒されず、立ち直れず…度々合コンを開催してくれたけど、私の酒癖の悪さも相成って男が逃げていった。
それでいいと思うんだけど。


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