政略結婚~天使に導かれて~
颯太の様子が可笑しいことに、栞は不安を覚えていた。

『颯太、お願い、私を捨てないで・・・・』心の中で

そう呟きながら、夕ご飯の準備をした。

栞は、比較的、洗濯や掃除は好きなのだが、料理は苦手で、作っても
いまいちの事が多い。

それでも颯太の為に、毎日悪戦苦闘しながら、ご飯を作っている。

そんな栞を見て、颯太は優しく

「美味しいよ。栞の心がこもっているから。」と、言ってくれる。

そんな優しい颯太が、好きだった。

今回の結婚の話が出た時、正直、気が狂いそうになったが、颯太が
『栞とは今まで通りで。向こうとは、形だけで、子供さえ出来れば
 向こうにも好き勝手にしてもらうから』と、言ってくれたことが
本当に嬉しかった。

颯太には話してないが、私が子供を産めなくなったのは、前に付き合って
いた相手の子供を妊娠し、中絶する際、術後の状態が悪くて、二度と
子供が作れなくなったのだ。

相手は、妻子ある男性で、『離婚するから』と言われていたのだが、
私の妊娠が分かると、手のひらを返したように、捨てられた。

そんな真実を、颯太に話すわけにはいかなかった。

病気で、産めなくなった!と、言ったことは、今でも良かったと
思う。

真実を知ったら・・・・・怖い・・・・・・

栞は、そんな不安を抱えながらも、いつも通りにしていた。
< 17 / 225 >

この作品をシェア

pagetop