ゆら ゆら
忘れない…忘れたい
幽かに見える光りは、月。
ゆらり…と揺れて形が歪む。
水底から見上げているというのに、こぽり、とも水泡は上がらない。
変なの…
と、思った所で、目が醒めた。
私、加奈子は23歳のOL。
地方都市で高校までを過ごし、短大入学のためにこの地に出て来た。
この辺り一番の都市。
適度に人との距離感があり、居心地が良かった。
誰も自分を知る人のいない土地で、漸く深呼吸が出来る気がした。