あたしとあいつ
第9章
ガチャン
みんなが帰る時間になり、あたしと一之宮は屋上に来た。
「...いいの?」
「何が?」
「あたしみたいな女で。...あたしよりいい人、たくさんいるよ?」
「僕は和泉が好きなの。別に嫌いなら嫌いってハッキリ言って。」
「嫌いではないけど...一之宮は頭が良くて、運動神経も良くて、優しくて、あたしとは正反対っていうか......」
「関係ないじゃん。」
「一之宮...」
「大切なのは、ホントの気持ち。...そうでしょ?」
...ホントの気持ち...か......
あたしが好きなのは...
『お前には笑顔が一番だ。』
『おう!見てろよ。俺だけを。』
『...これから『杏奈』って呼んでいい?』
『杏奈。』
...いやいやいや。
なんで翔大ばっかり出てくるんだ?!
あいつだけは好きにならないようにしなきゃ。
なぜなら、あたしよりも小さいから。
そう。そう決めたのだ。
「和泉?」
「いいよ。あたしなんかでよければ付き合おう。」
「ホントにいいの??」
「うん。」
「...ありがとう。よろしくね!」
「こちらこそ。」
「じゃあ帰ろっか。」
そう言って手を差し出してきた。
「...うん。」
これでいいんだよね?
あたしは無理矢理、自分の気持ちに鍵をかけた。