【完】大キライなキミに片想い中。





校門をくぐって通学路を歩く。


「なんか2人で帰るの変な感じだね」


由愛がつぶやくように言った。


「そうだな。由愛と下校したことない気がする」


「だよね!私、翔希君のこと大キライだって思ってたもん」


由愛に“大キライ”って言われると過去のことでもなんか、グサッとくる。


「でもね、今は気づいたんだ。本当は大キライなんかじゃなかった。あのときから翔希君が大好きだったんだって」


由愛は気づいてないだろうな。
俺が由愛以上にドキドキしてること。
そんな可愛い笑顔で言われたら、理性が持たないっつーの。


「翔希君……?」


心を落ち着かせるために下を向いている俺の顔を、由愛が覗き込む。
身長の関係で上目づかいになってることは、本人は自覚してないだろう。



「あーもう無理。限界」


「ひゃあ……っ!」


俺はそう言って由愛を抱きしめた。
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