【完】大キライなキミに片想い中。




「さ、帰るぞ」


「う、うん」


もう一度由愛の手を握って、歩き出したとき。



「翔希、久しぶりやな」


俺と由愛の前に誰かが立ちはだかった。
暗い赤の短髪でアクセサリーをチャラチャラと付けた男。


「忘れたとは言わせへんで?中学ん時、あんだけやりあったもんな」


一瞬、誰かと思ったけどその鋭い目を見てわかった。


「大垣零夜(おおがきれいや)……?」


「ピンポーン。せいかーいっ」


大垣零夜。
同じ中学で、よく俺に喧嘩売ってきてたヤツ。
いっつも俺に負けてばっかりで、それでも何回も喧嘩を売ってきた。
けど、零夜は中2が終わったとともに、大阪の中学へ転校していった。


そんな零夜が今、俺の目の前にいる。


「零夜、帰ってきたのか?」


「まぁな。父親の仕事の都合で転校したんやけど、わがまま言うてこっちで1人暮らしすることになったんや」


「ふぅーん………」


俺は興味なさげに言った。
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