恋人たちのパンドラ【完】
「すぐ、こっちに来い」

冷たいその声は間違いなく壮介のものだった。

「申し訳ございません。担当がただ今外出中でして―――」

「いいから、早く来るんだ。来ないとお前のところの契約全部破棄して出入り禁止だ!」

そう一方的に言われて、電話が‘がちゃん’と切られた。

仕事を盾にとられると、どうしようもない。

いつまでも逃げているわけは行かない。一日時間がたち少しは冷静に話ができるだろう。そう思い悠里は鞄を手にし、行き先のホワイトボードに『三国』と書き、会社を出た。
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