恋人たちのパンドラ【完】
「おい、これ―――」
壮介の視線は悠里の握っている部屋の鍵が付いたクマのぬいぐるみへと注がれていた。
正確には、そのクマの首もとについている赤いリボンに
「これ、あの時の・・・まだ付けてたのか?」
驚いた顔をして悠里を見つめる。
それは9年前、壮介が何の気もなしにカフェで食べたクッキーに付いていたリボンを悠里のクマのキーホルダーに結んだものだった。
とっさに悠里は隠そうとするが、壮介はそれを許さなかった。
「こんなの見せられて、お前の気持ちが俺にないなんてありえないだろ」
壮介の冷たい湖のようだった瞳はそこにはなく、熱く燃えたぎるような眼で悠里をみつめていた。
その瞳にとらえられた悠里は身動きできずにただ目を潤ませるだけだった。
壮介の男らしい骨ばった大きな両手が悠里の頬を包む。
ホロリとこぼれ落ちた悠里の涙を壮介の親指が拭う。
(神様はどこまで意地悪なんですか?どこまで私を苦しめるの)
自分の抑えられない気持ちが涙になってあふれ出た。
(∸――もう壮介のこの手を忘れられない。離したくない。それでも・・・)
それでも悠里は壮介の手を握り返すことができなかった。
壮介の視線は悠里の握っている部屋の鍵が付いたクマのぬいぐるみへと注がれていた。
正確には、そのクマの首もとについている赤いリボンに
「これ、あの時の・・・まだ付けてたのか?」
驚いた顔をして悠里を見つめる。
それは9年前、壮介が何の気もなしにカフェで食べたクッキーに付いていたリボンを悠里のクマのキーホルダーに結んだものだった。
とっさに悠里は隠そうとするが、壮介はそれを許さなかった。
「こんなの見せられて、お前の気持ちが俺にないなんてありえないだろ」
壮介の冷たい湖のようだった瞳はそこにはなく、熱く燃えたぎるような眼で悠里をみつめていた。
その瞳にとらえられた悠里は身動きできずにただ目を潤ませるだけだった。
壮介の男らしい骨ばった大きな両手が悠里の頬を包む。
ホロリとこぼれ落ちた悠里の涙を壮介の親指が拭う。
(神様はどこまで意地悪なんですか?どこまで私を苦しめるの)
自分の抑えられない気持ちが涙になってあふれ出た。
(∸――もう壮介のこの手を忘れられない。離したくない。それでも・・・)
それでも悠里は壮介の手を握り返すことができなかった。