恋人たちのパンドラ【完】
ただただ、涙を流す悠里に壮介は

「俺は、俺のやり方でお前を必ず手に入れる。時間なんていくらかかってもいい」

悠里は首を左右に振る。

「9年間どうやったってお前を心から追い出すことなんてできなかったんだ。それなら一生俺はお前を追いかける」

悠里の涙をなお壮介の親指が拭う。

「だから、覚悟して。∸――もう逃がさないから」

熱い眼差しのまま目を細め、悠里の好きな意志の強そうな形のいい唇を‘キュ’っと上げて壮介がそう言った。

肉食獣さながらの捕食者の目をした壮介に囚われた悠里は、本来ならば逃げなければならないと自覚しているが、その心地いいまでの拘束に逆らえないでいた。
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