恋人たちのパンドラ【完】
道路の反対側から車を避けて、悠里に近づく。悠里のそばを通行人がじろじろと見て行く。

「悠里!どうした。どこか痛いのか?」

しゃがんでいる悠里の肩を両手でつかみ顔を上げるように促す。

壮介がつかんだ勢いで悠里の顔が上をむく。顔は真っ青で目はうつろだ。

「あ、そう・・すけ?」

「そうだ。どうした。気分が悪いか」

そう顔を覗き込んで聞いてくる壮介に悠里は首をコクコク動かす。

「わかった。じっとしてろ」

そういって、壮介は悠里の膝裏に手を差し込み、抱きかかえた。

「あ、りがとう」

いつもなら降りたいとダダをこねる悠里だが、今は本当に苦しいのか素直に壮介の好意を受け入れた。

顔を壮介の胸にもたげたまま、じっとしている悠里を壮介は急いで悠里のマンションへと運んだ。

エレベータの中で青白い顔の悠里を壮介はみつめた。

(このまま、ずっと俺の腕の中にいてくれればいいのに)

悠里の体調の悪い今でさえ、この状況を好ましいと思っている自分に壮介は呆れた。
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