恋人たちのパンドラ【完】
「あなたは、９年前の事、その様子だとまだ知らないのね」

そう言うシスターに縋るように壮介は言う。

「どうしても今、９年前の真実を知らないといけないんです。お願いです、もうシスターしか頼る人がいないんです」

そう言うとシスターは悲しみを目に浮かべて話し始めた。

「あの頃のあなたたちを見てると、私も自然に笑顔を浮かべるほどあなた達二人は本当にほほえましかった。

まるで生まれた時からこうなるはずだったような、今まで二人離れてどうやって生きて来たんだろうとさえ他人の私から見ても感じるほどだったわ。

彼女は小さい頃、両親の離婚で少なからず傷ついていたし、あなたも家庭の問題を抱えていたわ。

でもそんな二人だからこそお互いを引きつけて離さなかったのね」

あの頃を思い出してそれまで笑顔だったシスターの表情が急に曇った。

< 136 / 233 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop