恋人たちのパンドラ【完】
「あんなことさえなければ、今も二人は笑っていられたでしょうね」

「あんなことって・・・」

「本当は秘密にすると固く約束したのだけれど、今のあなたを見ていると話をしたほうがよさそうね」

「お願いします」

壮介は、頭を深く下げシスターに続きを話すように促した。


「私が彼女に話を聞いたのはドイツに発つ直前だったわ。多分誰かに聞いてほしかったんでしょうね。一人で抱えるには辛いことだから」

壮介はシスターの顔を見つめたまま何も話さない。

「あの頃彼女、婦人科系の病気を患っていてね・・・。早く発見すれば大したことはない病気なんだけど発見が遅くて、内視鏡の手術もできず開腹の手術をしたの」

「――手術?」

「詳しい病名は私も教えてもらえなかった。傷も結構残ったみたい。一つ卵巣をとったそうよ・・・」

(だからあの時頑なにキャミソールを脱ぐのを拒否したのか。)

「俺には一言もそんな話・・・」

驚いた壮介は目を見開き、シスターを見つめた。

「でしょうね。どうしても言えなかったみたいだから。そのとき彼女医者に言われたそうよ」

壮介が息をのむ
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