恋人たちのパンドラ【完】
「妊娠は難しいでしょうって」

壮介は鈍器で頭を殴られたような衝撃が走った。

この場所で悠里は子供たちに囲まれてそれは天使のように幸せそうに笑っていたではないか?

保育士になるんだって瞳を輝かせて熱く夢をかたっていたのに。

そんなに子供が大好きな悠里にどうしてそんな酷いことが・・・

壮介は膝に置いた手を強く握りしめた。力を入れすぎて、爪は白くなっている。

「その宣告を聞いた瞬間、彼女自分のことではなくあなたのことを思ったそうよ」

「俺の?」

「そう、あなたよ。子供が産めない自分があなたのそばにはいられないって。将来子供沢山ほしいねって話してたのにその願いをかなえられない自分がそばにいちゃいけないって」

シスターは当時のことを思い出したのか目を潤ませながら話を続けた。
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