恋人たちのパンドラ【完】
「そんなこと一言だって・・・」

「それはきっと女心よ。彼女自分で言ってたの。子供が産めない不完全な女の私を知られたくないって。あなたの前ではちゃんと女の子でいたかったのね、それとこうも言っていたわ」

シスターは視線を再度窓の外に向けた

「あなたは優しい人だから、自分に子供ができないと分かってもそばにいてくれるだろうと。だけどそんな同情じみた感情でそばにいられて悲しいと。あなた、ときどきどこか他人を寄せ付けないことあったでしょ?彼女はあなたのそういう影の部分にちゃんと気が付いていたわ。だからこそ、あなたには家族が必要なんだって。だから自分ではあなたの傍にいることができないって」

壮介は当時の何も知らなかった自分に怒りがこみ上げて来て肩がふるえていた。
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