恋人たちのパンドラ【完】
「それならばいっそ、憎まれたまま傍を離れようって思ったみたいね」

そこまで、聞いていた壮介は怒りで握りしめた拳で自分の膝を強く叩いた。

「俺は一体、アイツの何をみていたんでしょうか?

何も知らずに自分だけが被害者になって何倍も苦しんでる悠里の気持ちを何一つ考えてなかった。

あの頃、アイツを守ってやろうって、守ってやれるって思ってた。思い上がりもいいとこだ

―――守られていたのはいつだって俺だったんですね」

膝を叩いていた手が止まり、そこにポタリと涙が落ちる。

一つ目の涙が落ちた後はぼたぼたと後から落ちズボンにシミを広げていたが壮介はそれを拭うことさえしなかった。

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