恋人たちのパンドラ【完】
そちらに顔を向けると、そこには白髪交じりの髪を綺麗に結い、着物を身に付けた初老の女性が歩いてきたところだった。

壮介の母親だろうととっさに気が付き、悠里は席をたち頭を深く下げた。

その女性はしずしずと部屋に入ってくると、悠里の目の前のソファに腰掛けて

「あなたもお掛けなさい」

と声をかけて来た。

「あ、はい。失礼します」

そう返事をして、ソファに腰を下ろす。今度はひっくりかえらないようにゆっくりと。そしてその短い時間の間に深呼吸をして落ち着こうと悠里は考えていた。


二人が席に着いたと同時に、先ほどと同じく無表情の川端が紅茶をタイミング良く運んできた。

悠里と壮介の母親の前に一つずつ置く。

すっと一歩さがって、会釈をしてその場を去った。
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