恋人たちのパンドラ【完】
悠里の部屋の鍵に付いているクマのぬいぐるみは、小学生の時に離婚した父が最後に一緒に祝ってくれた誕生日にくれたプレゼントだった。

すでにボロボロになっているが、自分で繕いながら今でも大事にしていた。

「俺も何か悠里に大事にしてもらえそうなもの用意しておくよ」

そう言って、クッキーの袋についていた赤いリボンをそのクマのぬいぐるみのキーホルダーの首にクルリと巻いて綺麗なリボンを作った。

綺麗に動く壮介の長いしなやかな指を見ながら、悠里は壮介の強引さの中の暖かさとそれに少しの影が混ざっていることを感じ取っていた。それもいつかきっと自分に話してくれるだろうと。

そして壮介も悠里を自分のものにするその日が来たら、自分のすべてを晒して悠里に壮介のすべてを捧げようと心に決めていた。

お互い待ちわびていた悠里の20歳の誕生日。

―――その日を二人で迎えることはなかった―――

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